芝川ビルの歴史

芝川ビル外観

芝川ビル

所在地
大阪市中央区伏見町3-3-3
構造
鉄筋コンクリート造地上4階地下1階
延床面積
約1,626m²
竣工
昭和2年7月1日
設計
澁谷五郎(基本計画・構造設計)
本間乙彦(意匠設計)
施工
竹中工務店
工費
25万円(当時)

芝川ビルができるまで

芝川又四郎

芝川又四郎

芝川ビルを建てた芝川又四郎は、明治16(1883)年に大阪・伏見町で、芝川又右衛門の次男として誕生しました。
芝川家は又四郎の曽祖父にあたる芝川新助が唐物商(欧米品の輸入業)を興し、商売は大いに盛んでしたが、又四郎の祖父・芝川又平(初代・又右衛門。又平は隠居後の名前)は、変動に満ちた近代社会の危険性をいちはやく感じ取り、リスクの高い唐物商を廃業、大阪の千島、千歳、加賀屋の三新田を購入し、土地経営というより確実な資産運用に転じます。

又四郎も生野、豊能郡(大阪府)、六甲、多田村、長尾村大野(兵庫県)、和歌山県や宮崎県、鹿児島県など各地の土地を購入したほか、建築にも興味を持ち、家督を継いだ大正12(1923)年の前後には、満州、青島、上海、アメリカを旅行し、建築と土地の視察を行っています。

■江戸時代~明治時代

芝川ビルを建てた芝川家と伏見町の関わりは、「大阪百足屋」という呉服屋を営んでいた芝川新助が、天保8(1837)年に大阪淀屋橋浮世小路から伏見町4丁目(当時)に移り、唐物商を始めたことに始まります。

明治期の伏見町の邸宅の多くは、大阪特有の格子づくりで、京都風の紅がらが塗ってあり、格子のうちは紙障子になっていました。芝川邸も半分は格子づくりで、東半分は下半分に船板を張り、上は壁塗りで瓦を乗せた塀になっていたそうです。

■明治23(1890)年

明治23(1890)年になると、芝川邸は煉瓦造2階建の洋館と、日本家屋、土蔵に建て替えられます。

商家としての業務は洋館で行われていたようですが、洋館の屋根は木で、ドアも板に銅を貼っただけであるため、防火上心もとないとの理由から、帳簿は毎日、簿記係が土蔵から出し、業務が終わると蔵にしまっていたと言います。

この洋館は、平成7(1995)年の阪神・淡路大震災により大きな被害を受け、取り壊しを余儀なくされましたが、暖炉部分は現在も保存されています。

■昭和2(1927)年

昭和2(1927)年、南米マヤ・インカの装飾を纏った芝川ビルが竣工します。

芝川ビルを建てた芝川又四郎は、かねてから店を不燃性の建物に建替えたいと思っていました。そんな折、大阪倶楽部において建築家の片岡安のスピーチを聞き、鉄筋コンクリートが耐震・耐火性に優れていることを知り、鉄筋コンクリートへの建て替えを決意したと言います。こうして建設された芝川ビルは、耐震・耐火性に細心の注意が払われており、その意気込みは、現在も建物の随所に見ることができます。

江戸、明治期の芝川邸

江戸、明治期の芝川邸

明治、大正期の芝川邸

明治、大正期の芝川邸

芝川ビル竣工当時

芝川ビル竣工当時

竣工当時の芝川ビル

芝川ビルの竣工当時、ビルの建つ大阪・船場地区にはまだ和風の木造家屋が多く、問屋でも、配達用の手車が置け、小店員を泊めることもできる和風家屋が重宝され、洋風のビルでは都合が悪いといった時代でした。又四郎がビルを建てたのも、防火の目的が主で、部屋を賃貸するというような考えはなく、全てを応接室・娯楽室など自家用として使用するつもりだったそうです。

2階応接室

2階応接室

1階客溜り

1階客溜り

1階事務室

1階事務室

芝蘭社(しらんしゃ)家政学園

昭和5年、芝川ビル屋上にて。芝川まき(前列左から2番目)、芝川又四郎(同3番目)、庄野貞一(同4番目)

昭和5年、芝川ビル屋上にて。芝川まき(前列左から2番目)、芝川又四郎(同3番目)、庄野貞一(同4番目)

しかしながら、芝川ビルは、自家用の使用だけではまだ余裕があったため、教育に関心を持っていた又四郎の意向で「芝蘭社家政学園」という花嫁学校として使われることになります。「芝蘭社家政学園」では、又四郎の義妹の芝川まき(千島土地㈱、百又㈱ 現社長・芝川能一の祖母)が園長を務め、当時、帝塚山学院の学長であった庄野貞一(さだいち)氏を学監*に迎えて、洋裁、和裁、習字、生け花、茶道、割烹など多彩な授業を開講する私学として、自由な構想で教育が行われました。昭和4(1929)年の開校から昭和18(1943)年の閉校までに、関西一円の名門女学校を卒業した3,000人を超えるお嬢さんたち、いわゆる「いとはん」たちが学んだ「芝蘭社家政学園」は、現在の女子短大のはしりであったとも言われています。

*)学監とは、学長・校長を補佐し、学務をつかさどる役のこと。

洋裁教室

洋裁教室

割烹教室

割烹教室

和裁教室

和裁教室

***芝川ビルガイドの決定版!『芝川ビル since1927』**

多数の資料や写真に基づいて芝川ビルの歴史をご紹介する冊子『芝川ビル since1927』(全36ページ)を1冊1,300円(消費税・送料込。お支払いの際の振込手数料は別途ご負担願います。)で販売しております。

ご購入をご希望の方は(1)希望冊数(2)氏名(3)住所(4)連絡先(電話番号)を必ずご記入の上、info☆shibakawa-bld.net宛にメールをお送り下さい。(※送信の際は☆を@に変換してお送り下さい。)折り返し、ご連絡を差し上げます。

このページの先頭へ