芝川ビル「建物語」

芝蘭社家政学園 創立記念演奏会プログラム

芝蘭社家政学園では「創立記念演奏会」が開催されていたようで、
昭和11年、昭和12年のプログラムが残っています。
(資料:F04_001_062,F04_001_063)
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昭和11年で第八回、昭和12年で第九回ですから、
昭和4年の芝蘭社創立時より毎年開催されていた計算になります。
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内容は劇、仕舞、舞踏、長唄、ピアノ、筝の演奏・・・・・・と盛りだくさん。
開会は10時からで、途中に昼食の休憩をはさみます。
茶菓の引換時間が16時までとありますから、なかなか長丁場のまさに一大イベント。
会場の三越演芸場は、今はなき大阪北浜の三越百貨店の西館8階の「三越ホール」で、
300席もの座席数があったようです。
昭和11年4月に竣工しているので、完成後さっそくの利用だったのですね。
▼大阪三越外観と「三越ホール」
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プログラム裏面は広告欄になっており、大日本果汁株式会社(現・ニッカウヰスキー株式会社)の「林檎汁(アップルジュース)」の宣伝が掲載されています。
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芝川ビル施主の芝川又四郎が大日本果汁の出資者の一人であった関係からでしょうか。
広告の「林檎ジュース」は、ニッカウヰスキー創業者の竹鶴政孝氏が自らの夢であった本格ウイスキー製造までの”つなぎ”として販売した製品ですが、清涼飲料水といえば「ラムネ」や「サイダー」だった当時、無添加の「天然林檎ジュース」は健康に良いとはいえ、酸味が強くて人々の舌に馴染まず、市場での苦戦を強いられたそうです。竹鶴氏は昭和11年に本格ウヰスキーの製造を開始し、昭和15年には第一号の「ニッカウイスキー」が完成、夢を実現しています。
■参考
「輝く大阪三越 開設三十周年記念」、日本百貨店通信社、1937
「株式会社三越100年の記録 デパートメントストア宣言から100年」
     三越本社コーポレートコミュニケーション部資料編纂担当編集、三越、2005
「大阪三越三十年史」、昭和織物新聞社編著、昭和織物新聞社、1933
「ヒゲのウヰスキー誕生す」、川又一英、新潮社、1982
※※掲載史料の無断転載は固くお断りいたします。



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