魅惑の小部屋、その見所
芝川ビル1階103号室に、この度、ショコラティア「TIKAL」がオープンし、せっかくたくさんの方にこのお部屋をご覧いただけるようになったので、今回はその装飾の見所についてご紹介していきましょう。
▼床のタイル
玄関と同じ、三色のタイルによる「タイルモザイク」。
3色5種類のタイルを複雑なパターンで並べ、単調に陥ることを上手に避けています。
竣工当時、この103号室は「客溜り」としてお隣の「事務所」(現・104号室、金子眼鏡店舗)と窓口を通じてやりとりができるようになっていました。このように外部の方が入室される可能性のある部屋(待合室や応接室)の床材には、「無責任にたばこを捨ててもだいじょうぶに」するためタイルを用いたと施主の芝川又四郎は述懐しています。
▼入口のドア
外側は緑色に塗られていますが、内側から見ると木のぬくもりが・・・と言いたいところですが、実はこの扉、「鉄製」なのです。
確かに木目もとてもリアルですが、これはひとえにペンキ職人さんの「職人技」の賜物。
今ではこういった技術をお持ちの職人さんも減ってしまい、このような扉の制作や修復はとても難しいのだとか。
▼壁面の装飾
(※この写真は「TIKAL」オープン前に撮影したものです。)
とても珍しいデザインの壁面装飾。
材料の「龍山石」は兵庫県高砂市が産地の凝灰岩の一種で、比較的やわらかいため、このような複雑な加工が可能なのです。
そして、この「竜山石」とよく似た性質を持つのが「大谷石」。建築家フランク・ロイド・ライトが代表作のひとつ、旧帝国ホテルで多用した、栃木県産の凝灰岩の一種です。
大谷石は、1923(大正13)年の関東大震災の際に旧帝国ホテルが焼け残ったことから、その耐火性・耐震性が見直され、建材としての利用に拍車がかかったと言います。
芝川ビル同様、船場地区に建つ「住友銀行本店」や御影の「旧乾邸」などに用いられていることでも有名な石材です。
▼頑丈な観音開きの鉄扉
芝川ビルの全ての開口部には、頑丈な「鉄扉」が設置されています。
これは又四郎が関東大震災の被害状況を視察した際に、焼け残った建物の窓に設置された頑丈な扉が火を防いだことを知り、火事に対する用心から取り付けたものです。
芝川ビルの鉄扉は「鉄板が外からの火の力でそるおそれがありますので、中にアスベストの入った特別のものを長崎の三菱造船所につくらせました」という又四郎こだわりの特注製ですが、火災のみならず、台風の時にも窓ガラスが割れるのを防ぎ、ずいぶんと重宝したようです。
▼天井
(※この写真は「TIKAL」オープン前に撮影したものです。)
プラスター仕上げの華やかな天井。
梁下に刻まれた文様は壁面装飾同様、古代中南米の香りがします。
*)プラスターとは、石膏・漆喰・土などを水で練って塗り仕上げに用いる材料の総称です。
そしてやはり、トリを飾るに最もふさわしいのはこちら。
▼梁下の彫像
梁の四隅で室内を見守っている四体の彫像。
ここを訪れる方から「怪獣」や「妖怪」と呼ばれてしまうこともありますが、どことなく愛嬌があって、なんとなく憎めません。
でもこの彫像たち、見る度にその表情に変化があるんですよ!・・・なんて言うと、まるで怪談のようですが、怖がらなくても大丈夫。
▲「・・・」(寝起きはあまり良くないようです。)
▲「にんまり」(嬉しいことでもあったのでしょうか。)
▲「えへ。」(あらあら、照れ笑いしています。)
▲「ふふふ・・・」(おっと、不敵な笑みを浮かべております!)
▲「はあ~」(ちょっと疲れてしまうことだってありますよね。)
▲「何か?」(うーん、あまりご機嫌が良くないようです。)
ほら。全然怖くないでしょ?
これらは、これまでの様々な機会に撮りためた画像ですが、見る角度や光の当たり方によってこれだけ多彩な表情を見せてくれるのです。
* * * * *
如何でしたか?
ほんの6坪強の小さな空間ですが、少し見ただけでもこれだけの魅力が凝縮されている、まさに「魅惑の小部屋」。ここでご紹介した以外にも、まだまだ魅力は眠っているのかも知れません。
この記事は、建物をご覧になるひとつのガイドとしてご参照いただくとして、ご覧になる方それぞれの視点で建物を様々に、楽しく“ウォッチング”していただけたら幸いです。
※写真は、芝川ビル建物語記事用に許可をいただいて撮影をしたものです。店内の写真撮影の可否については、店員の方にご確認いただきますようお願いいたします。
■参考
「小さな歩み ―芝川又四郎回顧談―」、芝川又四郎、1969(非売品)
「大谷石研究会」ウェブサイト
- 「芝川ビル モダンテラス」
夜間料金改定&ご予約期間変更のお知らせ - <<終了しました>>
~芝川ビル イベント開催情報~
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