芝川ビル「建物語」

芝川ビルの改修工事 屋上編Ⅲ(ポルティコの再生)

この度の工事の最大の懸案は、真四角に切り取られてしまった4階ポルティコのアーチの復元でした。(参考:芝川ビルの改修工事 屋上編Ⅰ
まず、残っていたアーチの下部と昔の写真から大体のアーチの大きさを割り出します。当初、半円形にアーチの型を取りますが、下部に残っている部分とずれが生じることから、このアーチはきれいな半円ではない事がわかります。
鉄骨でアーチの形を組み、鉄筋とリブラス(モルタル塗りの下地)を取付け、 
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藁すさ入りモルタルを塗り込んでアーチの形を作っていきます。
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次に、アーチの裾にほんの一部だけ残っていた装飾の再生に取り組みます。
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この部分については、写真や図面が一切なかったため、この装飾の一部から全体を推測するほかありませんでした。
模様を推測して木型を作成し、アーチに取り付けます。
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その上から既存のものに似た仕上げ材を作って塗りこみ、
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乾燥したところで木型を取り外します。
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下の白い部分がオリジナル、上のベージュの部分が今回新たに加えられた部分です。なかなか良い感じに調和しているのではないでしょうか。
後日談ですが、工事完成の後、芝蘭社家政学園の卒業生から、屋上で撮影した卒業写真をご提供いただいたところ、この装飾が写っていました。
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これによると、比率が若干異なるものの、今回再生された装飾とほぼ同じであることがわかります。装飾の再生にあたり、大変苦労した関係者の方々も一安心されていました。
最後に、漆喰撤去後の色ムラの激しい外壁には、カナリア石入り色モルタルが塗り直されました。洗い出しをおこなうことで、小石を露出させ、質感を出して仕上げます。
こうして、様々な試行錯誤の後に再生したポルティコのアーチ。再生前の様子と比較すると・・・
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以前の姿から比較すると、ちょっとした魔法にかかったような気分になるくらい、格段に魅力的になっていることがおわかりいただけるのではないでしょうか。
さて、終盤に近づいてきた芝川ビル4階の改修工事。次回は「総仕上げ編」と題し、新たに取り付けられた照明や手摺をご紹介しましょう。
→「芝川ビルの改修工事 屋上総仕上げ編」に続く
■芝川ビル ポルティコ・アーチの再生
施工・管理、工事風景写真提供:有限会社 和建築



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