芝川ビル「建物語」

芝川ビルの改修工事 地下室工事編

今年の1月より、芝川ビルの地下、1階、4階では、改修工事が行われました。
今回は、どのような工事が行われたのかを工事の画像を交えながらご紹介していきたいと思います。
まずは地下室から。
地下室は、木製間仕切り壁(下に掲載の平面図赤線部)で部屋を分割し、A室にはかつてレストランが入居していましたが、B室については物置となっており、壁にはベニヤがはられ、ほぼ「開かずの間」となっていました。
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こちらが工事前のA室の様子です。 (「大阪人」2006年11月号p.76より)
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床には塩ビタイルが張られています。
真ん中に見える白いタイル張りの台は“流し台”で、竣工当時のものではありませんが、かなり古いものです。芝川ビルが花嫁学校「芝蘭社家政学園」として使われていた時代(昭和4~18年)、この部屋がお料理の教室だったことから、その時期に設置されたものである可能性もありますが、明らかではありません。
工事は、A室 とB室の間の壁を撤廃するところから始まりました。
こちらが、壁の一部を撤廃した様子です。
B室の壁にはベニヤがはられていましたが、それを取り外すと、昔の写真から竣工当初のものと推測される壁が現れました。
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また、間仕切り壁を撤廃してみると、B室はA室よりも床面が低くなっていて、竣工当時のものと思われるタイルが張られていることもわかります。A室 とB室はもともとひとつの部屋だったことから、A室の床に張られた塩ビタイルを剥がし、その下のコンクリート層(厚さ約30mm)を削りとってみると、一部からB室のものと同じタイルが出現します。
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そこで、A室の床は塩ビタイルとコンクリート層を除去し、B室同様、床全面に白いモザイクタイル(一部、茶色のタイル)を張ることになりました。
ところで、モザイクタイルを敷きつめたように見えるこの床、実は、約80mm四方のタイルに縦横各3本の溝(下図の点線部分)を掘ったタイルが貼られていたのです。なぜこのようなことが行われたのかわかりませんが、80mm四方のタイルがそのまま張られるより、ずっと繊細に見えるのは間違いないと思います。
現在ではこのサイズのタイルは販売されていないため、溝で区切られた最小の約20mm角に近い大きさのモザイクタイルを用い、目地を調節しながら張りつけることになりました。
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写真上が従来のタイル、下に置かれたのが、今回使用したタイルです。
床には、この白いタイル以外にも、一部柱の周りや壁際に、茶色のモザイクタイルも張られていました。しかしながら、こちらは当初、どのような状態で張られていたのかを知る資料がないことから、大体の状態を予想し、既存のタイルと質感が最も近い既製のタイルを選んで張りつけました。
写真右側が従来のタイル、左側が今回張りつけたタイルです。
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こうして完成した地下室はこちら。
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タイルのてりが美しく、また茶色のラインがアクセントとして利いています。新旧のタイルが混在しているところに、この建物の経てきた歴史が感じられ、工事前よりも広々と、空気が澄んだように感じられます。
■芝川ビル地下002~005号室
施工・管理:有限会社 和建築



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