芝川ビル「建物語」

芝川ビルの謎Ⅰ(不思議な金具)

芝川ビルをご案内する機会も珍しくなく、日頃から、細かい部分まで見落とすまい!と目を皿のようにして建物を眺め回している・・・つもりなのですが、見学に来られた方から、「これは何ですか?」とご質問をいただいて、はっとさせられることも多々あります。
今回の「建物語」では、来訪された方からのご指摘によって気づかされた、屋上テラス壁面の”ある金具”について探ってみようと思います。
問題の金具はこちら。
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4階ポルティコ壁面に、等間隔に並んでいます。その数、13個。一見したところ、実用性はなさそうだし、装飾としては中途半端な感じ。
そういえば、テラス&ポルティコが再生される前、増築部分の骨格として、太い鉄骨が使われていたことを思い出します。もしかしたら、この金具は、戦後の増築の痕跡かも知れない!そう思い、(そして、ご質問いただいた方にもそのように申し上げて、)解体工事中の写真を早速チェック!!
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確かに、しっかりと鉄骨が組まれていますが・・・
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鉄骨はあくまでも壁の外側に立てられていただけのようにも見えます。工事の施工を担当して下さった、有限会社 和建築さんに問い合わせてみると、「増築工事とは関係なく、もともとあったものではないだろうか。」とのお返事。
そこで昔の写真をチェックしてみます。
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こちらは竣工後、間もない頃の建物の様子です。(資料:P21_015)
少し見えにくいのですが、どうやら金具はついていないようですね。
しかし、1942(昭和17)年の写真には・・・
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問題の金具がしっかりと写っています。
よく見ると、金具の中央にはフックがついているのがわかりますが、この金具、何に使われていたのでしょう??
ここは屋外なので、雨天時にはテントのようなものを引っ掛けて使っていたのでしょうか?
残念ながら、この金具に関する史料は何も残っていないので、このお話は推測に終わる以外ありません。しかしながら、これだけの空間を作る、モダンな感覚を持っていた当時の人たち。きっと私たちが驚くような、お洒落な使い方をしていたに違いない!と勝手に納得しています。



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