芝川ビル「建物語」

芝川ビルの改修工事 屋上編Ⅱ(屋上テラスの再生)

増築部分を撤去してみたものの、随分と様変わりしていた芝川ビル。竣工当時の屋上を撮影した2枚の写真を眺めながら、なんとかこのような魅力的な姿を取り戻したいという思いは募ります。

優先順位の高い部分から順次工事を始めますが、その内容は盛りだくさんで、様々な部分が並行して工事が行われました。工事項目別にその様子をご紹介していきましょう。

まずは、屋上テラス床のコンクリート撤去工事です。

屋上テラスの床にはPタイルが敷かれ、その下には、地下、1階同様にコンクリートが流し込まれていました。その厚さ、約100mm。そして、そのコンクリートの下には、生駒ビルディングさんや江戸堀コダマビルさんの屋上とお揃いのタイルが眠っていることがわかりました。
これまでの中で最高の厚みのコンクリートは、下にあるタイルを傷つけたくないという思いから、3段階に分けて削りとられていきます。

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まず、第1段階は、床材剥し機(スクレーパー)でPタイルを除去していきます。

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第2段階はチッパーでダイナミックに斫(はつ)り、その後、同じくチッパーで小斫りを行います。

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そして最終段階。先にご紹介したポリッシャーで丁寧に削ります。
手間をかけた甲斐があり、所々にコンクリートが残るものの、タイルの模様もはっきりと見ることができます。現場では、タイルの目地の間に残ってしまうコンクリートについて、「歯科医師の卵たちに、実習として削ってもらっては?」なんていう冗談も飛び出しましたが、これはこれで、歴史を物語ったひとつの姿だと言えます。

さて、この度の床工事で懸念されることが2つありました。
パラペット部分のスペイン瓦の落下と、テラスのコンクリート部分を削ったことによる雨漏りです。

スペイン瓦には、老朽化により一部クラック(ひび割れ)が入っていました。
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通常、この程度のクラックで瓦が落下することはないのですが、床工事による振動が懸念されました。何しろ、下は人通りの多い道路です。結局、用心のため、葺き替えにより瓦を一新することになりました。
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足場に乗った職人さんによって、縦横に人口木材の瓦桟が取り付けられ、横桟に地伏せ瓦を引っ掛けてボンド併用でビス留めし、縦桟の上には丸伏せ瓦をボンド併用でビス留めしていきます。
芝川ビルのスパニッシュ瓦は、過去にも一度葺き替えられたことがあるため、この瓦は3代目です。これら3世代の瓦は芝川ビル4階401号室に展示されており、代替わりする毎に、瓦の大きさや色合いが微妙に変化している様子をご覧いただくことができます。

そして、もうひとつが雨漏り。こちらは周辺の多くの近代建築のオーナーさん達を悩ませている問題でもあります。第一、これまで屋内だった増築部分を撤去、100mmのコンクリート層を削り取ってしまったのですから、雨漏りしない可能性の方が低いと言えるかも知れません。

やはり、実際に雨の日を経てみると、壁とテラスの床の境目辺りから雨漏りが発生。どうやら壁際のタイル下の防水層が切れているようです。そこで、建物の際の部分に防水処置を行うことになりました。

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外壁の下部と、タイルを剥がし、

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下地の処理をして、

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防水シートを埋め込みます。
最後に、剥がした外壁とタイルを元に戻すと完成です。

とても大変な工事でしたが、オリジナルのタイルをそのまま露出させることができたのは本当に幸いでした。

さて、随分と工事も進み、昔の面影を取り戻しつつある芝川ビルの4階。次回はこの度の改修工事のハイライトとでも言うべき、ポルティコのアーチ再生の様子をご紹介しましょう。

「芝川ビルの改修工事 屋上編Ⅲ(ポルティコのアーチ再生)」に続く


■芝川ビル屋上テラス&ポルティコ
施工・管理、工事風景写真提供:有限会社 和建築


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